米国大手ファストフード・チェーンの慈善団体への寄付打ち切りが話題に〜背景には左右の政治対立か

米国大手ファストフード・チェーンであるチックフィレイ(Chick-Fill-A)が、キリスト教系の慈善団体である救世軍及びフェローシップ・オブ・クリスティアン・アスリート(以下FCAと呼称)への寄付を打ち切ることを発表しました。

ロイター通信によると、スポークスウーマンは「我々は両組織と複数年に渡り関わりを持ち続けて来た。それらの取り組みは2018年に満了した」と語りました。

また、チックフィレイの非営利慈善団体であるチックフィレイ財団の発表によれば、同財団は2020年以降のアプローチとして貢献するフィールドを教育・飢餓・ホームレス問題の3つにフォーカスし、より少数の団体への貢献を深めるとしています。

同財団は2020年の寄付として、既にそれらの団体への900万ドル(約10億円)を寄付を行ったとのことです。

ソース:Chick-fil-A Foundation Announces 2020 Priorities to Address Education, Homelessness, Hunger

両団体のLGBTQ+への姿勢が論争の火種

このニュースを巡り、ソーシャルメディア上で論争が巻き起こっています。なぜならば、今回チックフィレイが寄付を打ち切った救世軍とFCAとは、LGBTQ+コミュニティから反LGBTQ+と目されている団体であり、多くのニュースメディアはその事に焦点を当てた報道をしているからです。

またチックフィレイそのものも過去の同性婚に関する論争でLGBTQ+サイドからの批判を受けていた企業です。ニューヨークタイムズの当時の報道によれば、チックフィレイ会長兼CEOであるダン・キャシー氏は2012年に同性婚への反対を表明し、キャシー家は反同性婚団体に対し数百万ドルの寄付を行っています。これに対してLGBTQ+のアクティヴィストたちはチックフィレイへのボイコットを呼びかけました。(Chick-fil-A Thrust Back Into Spotlight on Gay Rights

このような過去から、各ニュースメディアは今回の寄付打ち切りをLGBTQ+関連のニュースとして報道しています。

中道左派と目されるケーブル局CNNはオンライン版のタイトルを “Chick-fil-A will no longer donate to anti-LGBTQ organizations” (チックフィレイ、反LGBTQ組織への寄付を取りやめる)としています。

また、保守系ケーブル局であるFoxニュースもオンラインでのタイトルを “Chick-fil-A no longer donating to 2 organizations accused of anti-LGBTQ+ views” (チックフィレイ、反LGBTQ+的な見解を非難されている2団体への寄付を取りやめる)として掲載。

このようなニュースメディアの報道も相まって、ソーシャルメディア上では論争に発展しています。

LGBTQ+の権利擁護派からはこの決定を称賛する声が多い一方、保守層は激しい怒りを示しています。

元アーカンソー州知事で現在はFoxニュース等のコメンテーターとして活躍するマイク・ハッカビー氏は以下のようにツイートしました。

チックフィレイからの悲しいメッセージはとても明確だ。彼らは反キリスト教のヘイト団体らに屈したのだ。悲劇的だ。(以下略)

ハッカビー氏の他にも各種媒体の保守系オピニオンリーダーがチックフィレイの決定に反発する意見やリベラル派への批判をソーシャルメディア上に投稿しています。

救世軍とFCAは本当に反LGBTQ+なのか?

今回の寄附金打ち切りに対し、もう一方の当事者である救世軍とFCAの反応は異なります。

CNNの報道によれば、FCAは今回の打ち切りに関するCNNの取材には応えず、現時点ではノーコメントとされています。(Chick-fil-A will no longer donate to anti-LGBTQ organizations

もう一つの当事者である救世軍はインターネット上で声明を出しています。以下引用。

企業パートナーが飢餓・教育・ホームレス問題を扱う異なる福祉団体へと資金提供先を変更した事について、非常に悲しく思っています。これら三つの問題は我々救世軍が世界最大の福祉貢献組織として完全にコミットしている問題であります。

我々は毎年、LGBTQ+コミュニティを含む2300万人以上の人々の為に働いています。

そして我々は、我々こそがLGBTQ+の人々の飢餓を救って来た最大の奉仕者であると自負しています。我々は性的指向、性別、宗教、その他のあらゆる要素と無関係に社会奉仕をしていますが、そのような真実を無視する間違った情報が恒久的に社会に根付いてしまうことで、我々のそういった奉仕を行う力を失われてしまうかもしれません。

我々は、誤った判断が横行してしまう前に全ての人々がこの真実を知ってくれることを強く願います。また、我々の助けを必要としている人々のことを保証してくださるパートナー及び寄贈者の方々に強く感謝いたします。

引用元:Statement from The Salvation Army

このように、現在の救世軍は自らを差別なくサービスを提供する福祉団体と自認しており、今回のチックフィレイの決定に対して抗議の意を示しています。また、過去に複数の声明で救世軍は反LGBTQ+他あらゆる差別を認めていないということを主張しています。

一方で2010年代前半より前の数十年間に渡り、救世軍が反LGBTQ+的な態度を示してきたことも事実です。(参考:The Salvation Army’s History of Anti-LGBT Discrimination

このチックフィレイの寄付打ち切りへの報道及びソーシャルメディアの反応は、長きに渡って繰り返し起きた事件により定着したイメージを解消すること、そして分極化する政治対立の中で企業が立ち回ること、その両方の難しさを象徴しているのかもしれません。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中