ミネソタ州での2019年のEV(電気自動車)新規登録数が発表され、2017年から急増していることがわかりました。
地元のスター・トリビューン紙の報道によると、2019年の年間EV車両登録数は11,123台となり、2017年の4,360台から3年間で約2.5倍に増加したとのことです。またこれら11,123台のうちの2/3近くは中古車であることを、ミネソタ州公安局が報告しています。
このEVの登録増加の背景には自治体や連邦政府による奨励策があります。現在アメリカではノースダコタ、サウスダコタ、カンザス、アラスカを除いた46州が、EVとハイブリット車を対象とした優遇措置を行っています。
まず、連邦政府はEVの購入者を対象とした税額控除プログラムを行なっており、その車両に搭載されているバッテリーの容量に応じて2,500ドルから最大7,500ドルの控除を受けることができます。
ただしこの連邦政府のプログラムは、新車のEV及びプラグイン・ハイブリット車のみを対象としており、中古車は控除の対象からは外れています。
中古車への控除や優遇は各州に任されていますが、ミネソタ州での中古EVの登録増加の背景には、今後ミネソタ州が導入する予定である独自プログラムがあるとされています。
現在ミネソタ州運輸省はパイロット版プログラムとして、エコカーの新規所有者に高速道路の有料区間や有料のエクスプレスレーンなどの走行時に利用できるMnPASSクレジットを給付しています。電気自動車の場合は250ドル、プラグインハイブリット車の場合は125ドル分のクレジット給付となっています。
このプログラムは新車・中古車の区別なく対象としています。現在はミネソタ州政府が認可しているEV8車種(日産リーフやテスラ・モデル3、5、Xなどを含む)の新規所有者であれば、その車がディーラーから購入したものであれ、個人間の売買や譲渡で得たものであれ、クレジットの給付を受けることができます。
スター・トリビューン紙は、このプログラムが州内の中古EV需要を刺激した可能性があることを指摘しています。
しかし、中古EVを購入する際にはフル充電時の走行可能な距離を不安視するドライバーも多いようです。現在のEVは大きく改善し200~300マイル(約300〜450キロメートル)程度は走れるものの、数年前などに生産されたモデルでは技術がまだ未成熟だったこともあって元々走行可能距離が短く、更にバッテリーの劣化などの要因もあって、最大でも80マイル(約125キロメートル)程度しか走れない車もあります。
また五大湖沿岸で最も北西に位置するミネソタ州は寒冷地で、冬場は外気温がマイナス20度を下回る事もあります。そのような気候下ではバッテリーの性能が更に低下する可能性もあるとされています。
記事はEVの購入者はこのような走行可能な距離について少なからず不安を抱えているとしています。
中古EVの売買を刺激して登録車両数を増やす以上、今後はこのようなドライバーの不安を解消する為にも充電ステーションの増設などが、ミネソタ州の行政に求められていく事となるかも知れません。
アメリカでは数百キロメートル以上の長距離を自動車で移動することが多いので、今後EV所有者を増やすためには税制等での優遇措置や技術の進歩も重要ですが、一方でアメリカ特有の自動車の利用実態に合わせた行政サービスの拡大も重要視されてくるでしょう。
2019年11月からスタートしたこのプログラムは3年間の試験期間が設定されており、2022年10月末に終了予定となっています。
引用・参考
State Effort to Promote Hybrid and Electric Vehicles / National Conference of State Legislatures
Potential New Rules in Minnesota Could Boost Electric Vehicle Ownership / Star Tribune
MnPASS Electric Vehicle Incentive Three Year Pilot Program / Minnesota Department of Transportation