[COVID-19] アメリカのコロナウィルス、NY以外での感染拡大はこれからか

誰もが知るように、アメリカ国内での新型コロナウィルスのパンデミックは極めて深刻な状況にあります。合計感染者数は今や50万人にも届く勢いであり、死者数も18,000人を超えました。

一方で、最大の流行地であるニューヨーク州の感染者増加数は今週に入ってから安定しつつあります。4月5日と6日は10,000人を下回り、7日から9日にかけては9,000人から10,000人程度で安定しています。

3月中から倍々ゲームの勢いで急増してきた感染拡大の勢いに少々陰りが見えてきており、国内最大の流行地のこの状況を見て、トンネルの出口が見えてきたという見方も出てきています。

ドナルド・トランプ大統領は10日の記者会見で「我々はピークに近づいている」と語っています。

現在爆発的な感染を経験している北東部や南部ルイジアナなど一部の地域ではピークが見え始めた可能性があるのは確かです。

一方で、その他の大多数の州にはこれから感染爆発が起こる可能性があります。

 

50州で一番の優等生、ミネソタ州

筆者が住んでいるミネソタ州は、この新型コロナウィルスの流行を50州の中で最も抑え込むことが出来ている優等生です。

上に挙げたニューヨーク州は人口あたり感染者数も最悪の状況で、これを書いている10日17時30分(東海岸時間)現在では10万人あたり869人の感染者と40人の死者が出ています。

二番目に多いニュージャージーでは10万人あたり615人の感染者と22人の死者が、三番目のルイジアナでは413人の感染者と16人の死者が出ています。しかし、こういった感染状況はごく一部の地域の話です。

全米50州のうち34の州は現時点で10万人あたり100人以下の感染者数であり、10万人あたり10人以上の死者が出ているのはニューヨーク、ニュージャージー、ルイジアナ、ミシガン、コネチカットの5州だけです。

そのような数多くの州の中でもミネソタ州は非常に上手くやっています。9日時点での合計感染者数は1,242人、死者数は57人でした。これを人口あたりにすると10万人あたり22人の感染者、1人の死者であり、特にこの人口あたり感染者数の少なさは全50州で最小となっています。2番目に少ないウェストバージニア州が29人、それに次ぐハワイ州とネブラスカ州が31人です。

ミネソタ州では3月15日にはティム・ウォルツ知事がK-12(幼稚園から高校までの教育課程)の閉鎖、3月27日から4月10日まで全州民に自宅待機を指示し、更に4月8日にこの自宅待機命令を5月4日まで延長を命じました。これは日用品の買い物や散歩などまで禁じるものではありません。

また、停止を命じられていないにも関わらず多くの飲食店は、K-12閉鎖が指示された3月15日の翌日から営業の自粛を始めました。

州政府は2月から徐々に新型コロナウィルスの対策について言及し始め、感染爆発が先に起こったニューヨークなどの州と同じタイミングで対応策を打った為か、ここまで上手く状況をコントロールしてきました。

ミネソタ州の人口は560万人ですが、同等の広さに同等の規模の人口580万人を持つ隣のウィスコンシン州では10万人あたり50人の感染者が出ており、これはミネソタ州の2.5倍の多さです。

事程左様にミネソタ州は現時点ではパンデミックを他州に比べれば上手くコントロールしているわけですが、4月6日以降は状況が変わりつつある可能性があります。

 

ミネソタ州、そして多くの州のピークはまだ先か

ニューヨークでの感染爆発が始まった後、3月22日からの約二週間、長らくミネソタ州における一日の感染者増加数は比較的安定していました。

3月23日には州の健康省がその時点では最も大規模な検査が行い、突如として66人の新規感染者が確認されましたが、その後の二日間は25人前後の増加となり、26日に59人が新たに確認された後は4月6日までの約2週間は常に毎日60人から70人程度の増加で安定していました。

ところが4月7日に83人の感染者が新たに確認され、この日、州内では初めて80人以上の新規感染者が確認されました。

更に8日には85人、9日には88人が確認され、今日10日はこの記事を書いている夕方時点で94人の新規感染者が確認されています。

死者数も増加傾向にあり、4月8日までの一日の最大死者数は5人でしたが、9日に突如として11人に跳ね上がり、10日現時点での死者数は7人となっています。

こういった推移を見ると、ニューヨークの様なパンデミックが起きてしまった地域では一時的に拡大が鈍ってきている一方でミネソタ州では増加傾向が強まっていることが分かります。

ミネソタ州の地元テレビ局WCCOの報道によると、州内での感染のピークは5月頭から6月頃に訪れるとされています。つまり、ミネソタ州でのピークはまだまだ先のことであり、また多くの州においても同様の予測がなされています。

もっとも、このミネソタ州での増加傾向も現時点では倍々ゲームのような激しいものではなく数人ずつの増加なので、州政府の政策や市民の協力による感染拡大の遅延は上手く行っているとも取ることが出来ます。

また、健康省によれば全ての感染者のうち半数以上の732人は回復済みとしており、医療崩壊は起こっていません。

ウォルツ知事は、その4月8日の自宅待機命令の延長を発表した会見の中で以下のように述べています。

「私が州民の皆さんにお願いしたい事、そしてがミネソタ人の作法として今まで皆さんがやってきた事です。引き続き皆さんにソーシャルディスタンシングを守り、外出を控えてもらう事で、私たちに時間的な余裕を与えて欲しいのです。

私はこのような状況(ミネソタが感染の遅延に成功している事)を作り出してくれた皆さんの努力を称賛します。

(中略)

私たちは病院のベッドを更に増やし、検査体制を強化し、状況を変える為の更なる時間を与えて欲しいのです。そのためにも、自宅待機命令を5月4日まで延長します。」

ミネソタ州は遅延に今の所は成功している州であり、他にもオレゴン州やカリフォルニア州などを含めた一部の州にはこのまま軟着陸させることが出来る可能性があります。しかし、遅延を図る州のピークはまだこれからです。つまりアメリカ全体での収束はまだまだ全く見通しが立たないという事が言えるでしょう。

 

参考・引用

Minnesota Department of Health / Situation Update for Coronbavirus Disease 2019 (COVID-19)

StarTribune / Tracking coronavirus in Minnesota

The New York Times / Coronavirus in the U.S.: Latest Maps and Case Count

Wikipedia / 2020 coronavirus pandemic in New York (state)

YouTube – WDIO / UPDATE: Minnesota COVID-19 Press Conference April 8

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