9月頭、アメリカでは衝撃の予測がワシントン大学から発表されました。
アメリカ国内でのコロナウィルス死者数は19万人を突破し20万人にも迫る勢いですが、2021年1月までにこの数字は2倍に、更に今後国や州が外出規制などを積極的に緩和しつづければ62万人にも達するというのです。
現在、全世界で確認されている新型コロナウィルスによる死者数は92万人ですが、このうちの2割がアメリカでの死者です。なぜ世界最大の経済大国であり先進国でもあるアメリカでこのような事が起こってしまったのでしょうか。アメリカは何を失敗したのでしょうか。
パンデミックが終結していない段階での分析は必ずしも正しいとは限りませんが、既に専門家からもこの疑問に対する現時点での回答は出されています。
今回はアメリカの伝染病を専門に扱う医療ニュースサイトContagionliveにて掲載された、コロンビア大学AIDS研究センターのデイビッド・ホー博士のインタビューから、アメリカがパンデミック対策でおかした4つの失敗を紹介したいと思います。以下引用となります。
The 4 Ways the United States Failed in COVID-19 Response – ContagionLive
1.テストの失敗
最初の感染が出た時期において、アメリカ合衆国はこのウィルスを効率的に検査する事ができませんでした。それは初期に検査を統制によって円滑に供給する事に失敗したということです。ホー博士は不正確な検査キットの使用により、感染の実態を正確に観測・分析するための時間を1〜2ヶ月ほど無駄にしたと推測しています。
不適切な検査キットの使用と不十分な供給量という二つの問題は今もなお継続しています。それによりアメリカでは依然として受動的な対策を打つ事しかできていません。
更にこの問題はトラッキング等をはじめとした、データにより裏打ちされた先制行動的な対策を打ち立てる妨害となっています。これらの試みは西ヨーロッパ諸国ではパンデミック初期には実行されていました。
接触の追跡は今回のウィルス対策について必要不可欠な事ですが、アメリカ国内においてはそれを実行できそうな場所は存在しません。
2.お粗末な「優先事項」
パンデミック初期に各地で自宅待機を強制されていた期間、主に政治家のような人々は経済のバイタリティこそが最重要の問題であると強調していました。
このような物事が混在している優先事項の設定により、包括的な公衆衛生対応という問題が見落とされる事となってしまいました。
ホー博士は、まさに政治こそがこのパンデミックをコントロールすることに向けて強いメッセージを発信しコミットメントを深める必要があると強調しています。彼は経済活動の再開や「経済の健康」を取り戻すことの重要性は理解していますが、一方で「経済の健康は公衆衛生なくしてあり得ない」と語っています。
3.見失われた「定位置」
日々の新規感染者数を上手くコントロール出来ている国々とは違い、アメリカは一部の地域で起きた感染者数の急上昇が国全体に波及しやすい傾向にあります。
第一波の中でアメリカは二度の新規感染者数のピークを迎えていますが、そこからの下降傾向はソーシャルディスタンスを止めることが出来るほど十分かつ実質的な下降ではありませんでした、
ホー博士の説明によれば、それは丘から転がり落ちてきた岩をまた頂上に戻しただけのようなものだと言います。何かきっかけがあればそれはもう一度転がり落ちてくる、つまり新たな失敗によって再び新規感染者数の増加が始まるということです。
これによりアメリカは安定時の定位置を見失ってしまっているとしています。
4.不完全な予防
ホー博士は「全体として、私たちは予防を上手くやれていない」と語っています。
アメリカにはウィルス感染以外の病気、例えば肥満や糖尿病など、あらゆる病気の予防に失敗し続けてきた歴史があります。
問題はアメリカの予防医療や治療の技術を超えた所にあります。重要なのは地域医療や訪問診療などの仕組みが十分にそれを必要としている人々に届いていないことです。人々の健康意識の欠如は、まず供給やそれを得る機会が限られていることや、教育の欠如にも起因しますし、研究や薬理学の発展が不十分であることなどにも要因があります。
いかがだったでしょうか。特に3つ目の要因である、過剰な乱高下により専門家が現状を把握することが困難という点が物事の深刻さを語っています。
比較して日本のような国ではアメリカほどの乱高下がないため予測は立てやすい状況にあります。アメリカの場合は今後の方向性を打ち出すことすら困難な状況です。感染収束おろか、安定的な状況すらアメリカには当分訪れないのかもしれません。
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