アメリカ現地の9月29日に行われた第一回大統領選ディベートは非常に混沌としたものになりました。
形としては興奮状態のトランプが終始バイデンの発言を妨害しつづけるという、おおよそまともなディベートとは言い難いものでした。
内容的にはトランプが白人優位主義者を擁護するような態度を見せたり、バイデンの家族を侮辱するような発言をしたりとこれも酷いものではありましたが、これは別の機会に紹介しましょう。
民主党の大統領予備選を戦ったアンドリュー・ヤンはツイッター上で以下のような感想を漏らしました。
https://platform.twitter.com/widgets.jsI think Joe won but it felt like America lost.
— Andrew Yang🧢🇺🇸 (@AndrewYang) September 30, 2020
「多分ジョー(バイデン)が勝ったと思う、しかしこれはアメリカの敗北であるようにも感じる」
国の元首たる大統領が公開討論の場であのような振る舞いを見せた意味を考えさせられます。ヤンのこのツイートは2万回以上のリツイートと20万回以上のいいねを集めており、多くの人々が彼への共感を示しています。
また大手ケーブルニュースMSNBCのコメンテーターであるレイチェル・マドウは冗談半分にこのようなツイートをしています。
https://platform.twitter.com/widgets.jsPerhaps we could also debate by mail.
— Rachel Maddow MSNBC (@maddow) September 30, 2020
(郵便投票の議論に掛けて)「ディベートも郵便でやったらどうか」
第一回ディベートに対してはこのような呆れの感想が目立ちます。さて今後2回予定されている討論会でもまともな討論はなされずに、また同じ事の繰り返しになってしまうのでしょうか?
ここでニューヨーク・タイムズは少々興味深い報道をしています。
同紙によれば、大統領選討論会委員会(CPD)はトランプによる頻繁な妨害行為に対し、新たな措置を考えているといいます。
委員会は「今後の討論会で候補者たちがより秩序を持って重要な問題について議論を出来るようにするため、何らかの枠組みを追加する必要があるという事が、昨夜の討論会を通して明らかになりました」という声明を出しました。
更に続け、「CPDはそれを深く熟慮し、その枠組みについては近々発表します」としました。
つまり現時点では具体的にどのような対策を用いるのかは明らかになってはいませんが、今後の討論会ではディベートを成立させるための新たな方法やツールを導入するという事です。
またCPDは第一回ディベート司会者のクリス・ウォレスを称賛しているとしています。彼が今年のディベートの司会者としてのある種の基本的な振る舞いを見せたことは、今後2回のディベートに妨害行為を止めるべく実装される予定の「ツール」についての参考となるとのことです。
ウォレス氏をもってしても、トランプによる妨害行為をコントロールし切れたわけではありませんが、時折皮肉をまじえながらもトランプの身勝手な発言を叱り付けていた振る舞いは、視聴者にとっても印象深いものでした。彼の振る舞いが大統領選ディベートのフォーマットをどのように変化させるというのも、今後の討論会の見所の一つとなるのかも知れません。
現段階では具体的な対応策が出てきませんでしたが、ニューヨーク・タイムズは「司会者に候補者のマイクの電源を切る権限を与えるべき」といった意見が世間に広まっているとしています。
小学生同士のディベートなら良いですが、一国の元首の座を争う大統領選挙のディベートにこのような措置を加える必要があるということは、アメリカ人にとってみれば非常に不名誉なことでしょう。アンドリュー・ヤンの言うように、この討論会における明白な敗者は「アメリカ合衆国」なのかも知れません。