今週は史上最悪とも言われた大統領選ディベートの直後にトランプのコロナ感染。かと思えば即座に退院するなど、物事が大きく動いたように感じられた一週間でした。
しかし、有権者の心はもう大きく動く事はないのかも知れません。
昨日、CNNが興味深い世論調査を発表しました。
PDFへのリンク:http://cdn.cnn.com/cnn/2020/images/10/06/rel12b.-.2020.pdf
調査会社SSRSが10月1日から4日まで行った電話調査の結果、バイデン陣営を支持する有権者が57%に対しトランプ陣営を支持するのは41%で、バイデンがトランプを16ポイントリードしているというのです。
このギャップはCNNがこれまで行ってきたあらゆる調査の中でも最大の差であり、ディベート以後両者の差は大きく広がった可能性があります。
もっとも、他の統計を見てみるとこのCNN / SSRSの調査結果は少々極端な数字に見える事も事実です。
複数の世論調査結果をまとめているニュースサイトFiveThirtyEightによれば、10月5日時点でのバイデンの平均支持率は51.4%、トランプが42.4%で9ポイント差であるとしています。同じく統計平均を出しているReal Clear Politicsも9ポイント差でバイデン優勢としています。
ただしこれらの平均支持率には、9月中は7%まで縮まっていたものが再び開き始めた傾向が見られるため、これはトランプ陣営にとっては厳しい状況です。
支持率以上に重要な数字
この調査結果はトランプ陣営にとって厳しいものですが、彼らにとって最悪のニュースはこれではない、とCNNの政治コメンテーターであるクリス・シリザは分析しています。
シリザによれば、この調査で最も重要なのは浮動票がなくなりつつある事、そして仮に16ポイント差が真実であるならば、トランプが一般投票率で半分以上を獲得するにはその僅かな浮動票全てを取らなければならないという事の二点なのです。
同調査結果によれば、全ての回答者のうちの90%は既に自身の投票先を決めてそれは揺るがないとしています。一方で心変わりする可能性を残していた回答者はわずか9%でした。
更に陣営別で見れば、バイデンを支持した回答者のうちで心変わりする可能性があると答えたのは8%であったのに対し、トランプ支持で同じ回答をしたのは10%とややバイデン陣営より多い結果となりました。
すなわちトランプの支持者の方が、バイデンの支持者に比べても、候補者からより離れていきやすい可能性があります。
トランプが勝つにはこの10%の投票者たち全員の心を繋いだまま、8%のバイデン支持者を取り込む必要があります。
これは16ポイント差という数字以上に、トランプ陣営にとってはインパクトがある調査結果なのかも知れません。彼らが挽回出来る余地は狭まっているのです。
シリザはこの背景には正にトランプ自身が生み出した分断があるとしています。
「トランプは史上最も極端な大統領であり、彼が本来は中道派や、政党にかすかな帰属意識を持っていた投票者たち(浮動層)を共和党あるいは民主党の陣営に押し込んでしまった。」
トランプは極端かつ攻撃的な言動や、異常な振る舞いを見せ続ける事で、自身の熱烈な支持者を獲得し、彼らのパワーによって大統領に当選することとなりました。
しかし、当選後にも常に国内を敵味方に分断するような政策をうちつづけた結果、遂には自身が育てた分断によって苦しめられる状況を作り出してしまいました。
第一回ディベートの最後の発言時間にバイデンが「私は全てのアメリカ人の大統領になる」と言いかけた所を、トランプは横から発言を遮る妨害行為を行いましたが、これは分断者であるトランプを象徴する場面だったのかも知れません。
トランプは前回の選挙でも多くの予測や調査を裏切る勝利をおさめたため、今回もどのような結果に行き着くのか全く分かりませんが、もし仮にトランプがこの選挙で敗北するのなら、その敗因は最も彼らしいものになるのかも知れません。
引用
Donald Trump is losing by 16 in a new CNN poll. And that’s not the worst news. – CNN politics