ウクライナ侵攻と難民問題が曝け出す、欧米の人種差別

2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻は現在進行系で多数の難民を生んでいます。3月10日現在、既にウクライナ国内からは200万人を超える難民が隣国等へと避難をしています。

多くの西側メディア、そして日本の報道ではウクライナ人の難民にスポットが当てられていますが、その裏側で有色人種、特に黒人に対する差別的な扱いを問題視するような報道が非西側のメディアから出ていますので、今回はいくつかの事例を紹介したいと思います。

カタールに本拠を置く衛星ニュース局アルジャジーラは、ウクライナ国内にいたアフリカ系留学生に焦点を当てたリポートをしています。

記事の中ではウクライナ国立航空大学の1年生であった、ジンバブエ出身のバーラニー・ムファロ・グラレさんが、アルジャジーラの電話取材に対して以下のように語っています。

「私達は動物のように扱われていると感じました。キエフから去る時に、私達はただ生き残ろうとしただけでした。彼らが私達をそんな風に扱うなんて思いもしませんでした。私は誰もが平等だと思っていたから。」

グラレさんは4人のアフリカ人学生と共にポーランド国境に向かいましたが、そこでは入国審査でウクライナ人に優先権が与えられており、彼女らは9時間以上もの間そこで留め置かれていたといいます。

北部以外のアフリカほぼ全域をカバーする国際ニュース放送局であるアフリカニュースもこの問題について伝えています。

記事によれば、ナイジェリア政府がこういったアフリカ人差別に対する憂慮を示した事に触れて、とあるソーシャルメディアの投稿を紹介しています。

「列車に乗ろうとするアフリカ人をウクライナ人が妨害する様子」

実際にはこういった投稿は数多く存在するのですが、こういった状況が知れ渡った事や、2月末時点で4000人ものナイジェリア人がウクライナに留め置かれていた事により、ナイジェリア政府はウクライナ及びその周辺各国に対し、有色人種の尊厳を守って扱うことを求めました。

ナイジェリアの大統領広報官であるガルバ・シェフ氏はポーランドに対して「ウクライナ警察や保安担当者がナイジェリア人のバス・列車への乗車を断ったという残念な報告を受け取っている」と発言しました。

これに対してポーランド側の駐ナイジェリア大使であるヨアンナ・タラナフスカ氏は「全ての人々が平等な扱いを受けています。私が持つ情報によれば複数人のナイジェリア人は既にポーランド国境を越えたと言います。これを保証します。」と語りました。

このやり取りは28日時点で行われたものですが、それ以降もソーシャルメディア上では上記のグラレさんのような目にあったという報告が絶えないと言います。

こういった様子はアメリカ国内のニュースメディアではごく小さなニュースとして扱われていますが、コメディ専門局であるコメディ・セントラルの風刺番組デイリーショウはこの問題で一つのコーナーを設けました。

動画後半で様々な差別の現場を捉えた映像を紹介しているのですが、最後のインタビューを受けている黒人男性はコンゴからの難民でした。避難する鉄道への乗車を断られた彼はこの様に語っています。「彼ら(ウクライナ人)は私に銃を与えると言ったんだ。そしてウクライナの為に戦えと。でも私達はウクライナ人じゃない。私達は黒人だ。どうウクライナの為に戦えって言うんだ?」

これに対して司会のトレバー・ノアは視聴者に対してこの様に語りかけいます。

「ああ、ちょっとこの事について考えてみましょう。まずは学生、旅行者、滞在者。たくさんの黒人が、彼らが黒人であるが故にウクライナから出ることが出来ないと言っています。

で、この男性です。想像してみて?こう言われるんですよ。国から出してはやらない、そして戦うために銃を取れって。これはおかしいでしょう。」

また異なる種類の差別を今回のウクライナ侵攻から見い出すメディアもあります。

インドの英語ニュース放送局WIONは、欧米メディアのウクライナ難民とシリア等中東からの難民に対する扱いの違いを指摘しています。

WIONは欧米ニュースメディアの記者らの言葉を引用して伝えています。

BBCの記者のコメント「非常に感情が揺さぶられます。なぜなら私は青い目とブロンド髪のヨーロッパ人が殺される瞬間を見たわけですから。」

NBCの記者がウクライナ難民を指してのコメント「これはシリアからの難民ではありません。彼らはキリスト教徒で、白人です。彼らは(私達に)とても似ています。」

ABCの記者のキエフを指してのコメント「ここはイラクやアフガニスタンとは違います。ここは比較的文明化されていてヨーロッパ的な都市です。」

またブルガリアの首相であるキリル・ペトコフはウクライナ難民について以下のように語っているといいます。

「これらの人々は知性的で、教育された人々だ。(中略)過去に私達が見てきたよく分からない難民たちとは異なる人々だ。」

これらの引用を見ていると、ウクライナ難民問題は欧米社会における白人優位主義的な差別構造を浮き彫りにしている事が分かります。

日本はこういった構造から切り離されているように見えますが、実際は分かりません。

例えばウクライナ侵攻問題がある程度収まった時に、日本政府が認定したウクライナ難民とシリア難民の人数を比較すると興味深い知見が得られるかもしれませんね。

引用・参考記事

https://www.aljazeera.com/news/2022/3/2/more-racism-at-ukrainian-borders

https://www.africanews.com/2022/02/28/russia-ukraine-conflict-africans-face-racial-discrimination-in-ukraine/

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