党派で見る「ウクライナとの関わり方」

ウクライナ戦争において、西欧を中心とした自由主義陣営はウクライナに対して支援を行っていますが、アメリカはその中心的な役割を担っています。

5月末の時点で、アメリカが今回の戦争においてウクライナに対して行った軍事支援の総額は400億ドルを超えており、これはウクライナの年間軍事費の6~7倍近い額であるとされています。

今回はこういったアメリカのウクライナ戦争に対する関与の仕方について、アメリカ人がどのように見ているのかを、「党派」と「データ」によって見ていきたいと思います。

ウクライナ支援への見方は、大統領を支持するか次第?

ここからはPew Research Centerのデータを引用しながら見ていきます。

データによれば、アメリカ人全体としてはバイデン大統領によるウクライナへの軍事支援を支持する人が多いようです。

5月10日時点での、党派などを無視し全体で見た、バイデン大統領のウクライナ対応への支持率は43%であったのに対し、不支持率は35%でした。

ここで興味深い点は、3月の開戦当初と5月時点での党派別に見た支持に不思議な変化が出ている事です。

3月前半、民主党支持層のうち69%はバイデン政権のウクライナ戦争への対応を支持していましたが、5月には支持率は63%まで後退してしまいました。不支持率はどちらも17%で変化がありませんので、積極的に反対する人が増えたわけでもありませんが、民主党支持者のうちのいくらかの人々は、政権のウクライナ対応に対して何らかの疑問を持ち始めているようにも見えます。

一方で、野党共和党の支持層のうち、3月前半時点でウクライナ対応を支持していたのは21%でしたが、5月には26%まで伸びました。またウクライナ対応への不支持は67%から55%まで大幅に改善しました。

つまり、バイデン大統領はウクライナ戦争への対応については、自身の支持母体からの支持を若干失いつつ、敵対する野党支持層からの支持を少しばかり取り込みつつあるように見えます。また今後は党派を超えて今のような形でのウクライナ支援を継続していくような状況が出来上がっていくかも知れません。

しかしながら、一方でアメリカ人は少しずつウクライナへの支援に消極的になっていく可能性もデータで示されています。

3月時点では、ウクライナへの軍事支援を不十分であると答えた人は全体の42%でしたが、5月時点はそれは31%まで減少しています。一方で適量であるとした人は32%から35%に伸び、過剰であるとした人は7%から12%まで伸びています。

今後、不十分とする人が減少し、適量あるいは過剰とする人が増えていけば、当然ながら支援の継続は難しくなっていきます。

東部の戦線で押されつつあるウクライナ軍にとって、援軍を期待出来ない今の状況下ではこういった支援だけが頼みの綱でしょうが、それもいつまで継続出来るのかは不明瞭です。アメリカの世論はウクライナの戦況を不利な方向へ動かす可能性があります。

支援継続を占うのは「わからない人たち」

この不十分か過剰かのデータを更に党派別に分解するとこのようになります。

ここから見えてくる事の一つは、共和党支持層の中のより強硬な保守派は他の党派に比べて今の支援の量に対しあまり満足していないという点です。

共和党の保守派のうち不十分であるとしたのが40%で、これは共和党の中道派や民主党と比較して大きいものです。ですのでバイデン支持から最も遠い保守勢力は、今後の支援継続を支持する可能性があります。

両党の支持層を比較すると、共和党支持層のうち17%はすでに支援が過剰であるとしています。一方民主党支持層で過剰とする人は共和党と比較して少ないものの、4割近くがここまでの支援を適切な量であると見ているようです。

仮に今後も継続的に支援を行えばどうなるでしょうか。バイデンは共和党の保守勢力を満足させる一方で、自身の政党である民主党の支持層のうち多数である「今の支援に満足している人々」を敵に回してしまう可能性があります。

しかしながら、全体であれば22%、特に民主党では23%の人々がこの「不十分か十分か」という問いに対して「分からない」と答えています。

こういった人々の多くが「不十分だ」と感じるような何かが起きれば、アメリカ世論は支援の継続に積極的になるでしょうし、こういった人たちが「過剰だ」と感じれば、アメリカからのウクライナ支援は加速的に縮小していくかも知れません。

これからの戦いで起きる物事がアメリカ世論に与えるインパクトを分析することは、ウクライナ戦争の先を見通す重要な鍵となるのかも知れません。

何らかの目的の為に戦争の継続を望む人々や早期の終結を望む人々は、アメリカ世論のこれらの面を注視し、「わからない人々」の心を刺激するための何かを仕掛けるのかも知れません。

引用・参考

Americans’ Concerns About War in Ukraine: Wider Conflict, Possible U.S.-Russia Clash Pew Research Center

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