2022年中間選挙で共和党が目指す事とは

来る11月8日、アメリカでは中間選挙の投開票が行われます。

この中間選挙で連邦下院の全議席と上院の約3分の1にあたる34議席が改選されます。

選挙2日前の時点において、上下院共に政権与党である民主党にとっては厳しい予測がなされていますが、特に下院では大敗がほぼ決まっているという状況で、下院の定数435議席に対して野党共和党が最大で240議席という予想もあります。

では共和党が下院で勝利したならば、一体彼らはどのような政策を実行するのでしょうか。あるいは実行を目指すのでしょうか。

アメリカの二大政党には日本の政党の党首のような明確なリーダーがいませんが、各議院にそれぞれのリーダーがいます。

その下院の共和党側リーダー(院内総務)であるケビン・マッカーシー議員は、今回の選挙公約として”Commitment to America”という政策集を掲げています。その内容を見ていきましょう。

インフレ、国境、憲法

マッカーシーのマニフェストを見ると、アピールしているテーマを大きく3種に絞っている事がわかります。すなわちインフレ、国境、憲法だと言えます。

まずはインフレで、これはウクライナ戦争以降顕著となっている国内のインフレを収めるというもので、わかりやすくバイデン政権のウィークポイントを突いてきた形になります。

アメリカの消費者物価指数は今年8月に8.3%の上昇を記録し、9月以降もこういった記録的インフレが続いています。

また車社会であるアメリカにとって極めて重要なガソリン価格は昨年から今年の7月まで上昇が続き、2020年に1ガロンあたり1.9ドルだった価格は一時5ドルまで高騰しました。

現在は3ドル台まで落ち着いてきているものの、ウクライナ紛争に終結の兆しが見えない現時点では20年の水準まで戻ることは望むべくもないでしょう。

元々ある程度のインフレはバイデン政権の目指す所でもありました。就任一年目に積極財政でインフラや福祉など様々な分野で大規模な財政出動を行いました。

しかしウクライナ戦争で国際的なサプライチェーンが麻痺するとインフレは激化してしまうこととなりました。

このインフレを解決するために共和党が提案していることは、小さな政府志向である共和党らしく財政出動のストップです。彼らは民主党の積極財政が現在の物価高騰の直接的な要因であるとしており、これを止めることで事態の好転を狙うようです。

またサプライチェーンを再構築して中国依存を脱却するとし、国内産業を強化するともしています。尤もそれはバイデン政権が目指す所であったわけですが。

第二のトピックは国境問題です。これはトランプ政権時代から言われていたメキシコ国境を越えてくる中南米からの不法移民への対策強化です。

またこの問題と結びつけて国内の治安強化も訴えており、全国の警察官の給与を上げるような公約も立てています。

第三のトピックは憲法で、ここでも従来の共和党の憲法と自由に対する姿勢を貫く事が明言されています。すなわち言論の自由の保護、人工妊娠中絶反対、銃規制反対といった立場です。

人工妊娠中絶は、これを「憲法で認められた女性の権利である」とするロー対ウェイド判決が今年6月に共和党多数の最高裁で取り消されたばかりであり、今回の選挙の重要な論点であるとされています。

このように3つのトピックを掲げているわけですが、あとの2つはある意味でいつもの共和党という感じです。やはりもっとも重要なトピックはバイデン政権下で、特にここ一年で進んだインフレと言えるでしょう。

一方で日本人として感じる違和感は、共和党がその公約の中でウクライナ情勢に対して全く関心を示していない点ではないでしょうか。

インフレの原因をバイデン政権の財政出動に求める一方で、より直接的な悪化の原因であるウクライナ戦争の事は無視しているわけです。

ウクライナについて

では共和党はウクライナで起きている戦争に対してどのような立場を取るのか、そのヒントとなるかも知れない言葉が、”Commitment to America”の序文に書かれています。

その序文の一番最初に書かれている言葉とは”America is Exceptional”、すなわち「アメリカは例外だ」です。

元々アメリカには歴史的に「アメリカ例外主義」という思想があります。これは端的に言えば「アメリカは国の成り立ちから全てが他国とは異なるため、例外的な振る舞いをしても許される。国際法もアメリカの利益に供するものでなければ無視しても構わない」というものです。

この言葉が真っ先に出てくるあたりで、共和党が現在の国際情勢の中で取りたいスタンスが表れているように見えます。すなわち国際協調よりも自国の利益優先という方向性に舵を切る可能性です。

現在バイデン政権は特に西側諸国との国際協調を進める立場から積極的にウクライナに対する武器支援やロシアへの制裁を行っていますが、共和党はこういった動きをある程度抑えたいと考えている可能性があります。

下院には特に外交に対する権限がないため、バイデン政権の外交方針を根底から覆す事は不可能です。しかしながら下院には予算の先議権があり、武器支援などの予算を削ることでバイデン政権に枷をかけようとするかも知れません。

現時点では不明瞭ですが、今回の中間選挙はアメリカ国内のみならずウクライナ戦争にも何かしらの影響が出ることは間違いないでしょう。

参考・引用元

Five Thirty Nine 2022 Election Forecast – https://projects.fivethirtyeight.com/2022-election-forecast/

Commitment to America – https://www.republicanleader.gov/commitment/

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