UPI通信の報道によると、4月13日にニューヨーク市のエリック・アダムス市長は、元学校教師のキャサリン・ロラーディ氏を市の齧歯類低減監督官、またの名を「ネズミたちのツァーリ(専制君主)」に任命したことを発表しました。
アダムス市長は任命演説でこのように語っています。
「ニューヨーク市は、最大の公衆の敵であるネズミに対して、昨今多くの事をしてきました。しかし、市全体でのネズミの数を低減する努力を先導するリーダーが必要な事は明らかであり、私は今日キャシー・コラーディ氏を『ネズミたちのツァーリ』とする発表を出来ることを誇りに思います。」
今後、コラーディ氏はネズミの数の低減の為のプラン策定に責務を負う事となり、関連する市の機関がネズミの発見・捕捉や、餌となっている食べ物・ゴミの削減などの実務を行っていくようです。
またコラーディ氏の任命に加えて、市長はネズミの数低減に向けて350万ドルの投資を行うことも発表しており、これは対策スタッフの雇用やネズミ駆除用の設備投資に回されます。
アダムスのスピーチ、そして『ネズミたちのツァーリ』と呼ばれる新たなポジションが設置された事に対して、オーバーな語り口であると疑問に思われるかも知れません。
しかしこうしたニュースの背景にはここ数年のニューヨーク市で起きている衛生悪化があり、それは市当局からは深刻視されているのです。
2022年のニュースで、ニューヨーク市内におけるネズミの目撃報告数は21,557回となったと報じられました。これは市の観測史上で最大の数であり、しかも2020年の目撃件数と比較して74%も増加しました。
ネズミは伝染病を媒介する可能性があるため、その劇的な増加が市の衛生に対し悪影響をもたらす事に対して市政を司る政治家たちは関心を示しています。
現市長のアダムスは2022年1月から就任しましたが、彼は選挙戦においてはネズミへの対策を公約として掲げていました。
また市議会議員のエリック・バッチャーは建物を撤去した後に出てくるげっ歯類に対して、開発業者は害獣駆除を行う手段を採用することを義務付ける新法を導入しました。
このように、ニューヨーク市で注目されるネズミの爆発的増加ですが、その原因は明らかとなっていません。しかし、推定される原因の一つにCOVID-19による都市環境と人の活動の変化があります。
パンデミック発生後の一時、多くの飲食店は平常通りの営業を行うことができなくなりました。密閉された店内での飲食が難しい中、ニューヨークでは路上に屋台のような小屋を設営し、そこで飲食物を提供するような営業形態が出てきました。
このような形での営業が近隣でのゴミ増加や食べ物の路上での散乱に繋がり、それがネズミの増加につながっているという報道もされています。
コロナウィルスのパンデミックによる人間の行動様式・生活様式が大きく変化は環境に対し様々な影響を与えており、特に都市は人間が生活するために作られた環境であるため、そこに住み人々の行動様式が一斉に変化すれば、そこに生息する生物の生態系もまた大きく変化するのは当たり前のことなのでしょう。
このような現象は西欧の後を追いながら様々な行動規制を緩和・撤廃しつつある日本でも今後あらわれるのかも知れません。
参考・引用
New York City appoints first-ever ‘rat czar’ – UPI Press