2010年代は虹色の時代だった 〜アメリカにおけるLGBTQ+十年史〜

NBC Newsは同社ニュースサイトでA very LGBTQ decade: Gay marriage, trans rights and a ‘rainbow wave’(とてもLGBTQな10年間:同性婚、トランスジェンダーの権利、そして「虹色の波」)という記事を掲載しました。

2010年代は、LGBTQ+コミュニティにとって当然の権利や社会的な理解を得る事が出来た、前進の十年間でした。

今回の投稿ではこのNBC Newsの記事を参考として、2010年代にアメリカ合衆国で起こったLGBTQ+の十年史について解説します。

 

2010年

米軍の「聞くな、言うな」法の撤廃

2010年12月22日、バラク・オバマ大統領は議会に働きかけて、”Don’t ask, don’t tell”(聞くな、言うな)法、通称DADTの撤廃を行いました。この撤廃はオバマが前年の選挙公約として掲げていたものでした。

元来アメリカ軍では同性愛者の入隊が禁じられていましたが、ビル・クリントン大統領はその解禁を公約として選挙戦に勝利しました。しかし彼は議会や世論などからの反対にあい、最終的に1993年に「同性愛者は入隊は認めるが、それを周りに公言せずに勤務すること。そして軍は入隊者に同性愛者であることを尋ねることを禁止する」という妥協を行うことで、なんとか同性愛者の入隊を解禁することが出来ました。その妥協の産物がDADTでした。

しかし、世論からは、同性愛者であることを偽ったり隠し通す事を強いるのは、抑圧的・差別的であるとの批判が生じました。そして遂にオバマがこのDADTを撤廃し、以降同性愛者の軍人は自分のジェンダーについてオープンに表現することが出来るようになりました。

 

2011年

ニューヨーク州で同性婚が解禁

2011年6月24日、ニューヨーク州の州議会で The Marriage Equality Act 婚姻平等法が可決し、その1ヶ月後の7月24日に施行されました。

これによりニューヨークが合衆国内で同性婚を認める6つ目の州となりました。また1,000万人以上の人口を抱える州の中では最初の州ともなりました。

 

2012年

連邦上院史上で初めてLGBTQ+の政治家が当選

2012年11月、ウィスコンシン州から史上初のLGBTQ+の上院議員であるタミー・ボールドウィンが当選しました。また、彼女は1998年に史上初めて同性愛者を公表し当選した下院議員でもありました。

その後、ドナルド・トランプ大統領は2016年の大統領選挙においてウィスコンシン州で勝利を収めましたが、ボールドウィンも同日の議会選挙で勝利し、現在は2期目を務めています。

 

2013年

連邦最高裁が、結婚防衛法に違憲判決

2013年6月、連邦最高裁判所が1996年の結婚防衛法を違憲とする判決を下しました。(アメリカ合衆国対ウィンザー裁判)この結婚防衛法は、合衆国側が婚姻を「1人の男性と女性の間で」取り交わされるものであると定義し、同性婚への是非の判断を下す権限を各州に委ねる法律でした。

この違憲判決により、首都であるワシントンD.C.及び12の州で同性婚が合法化されることとなりました。

 

2015年

元オリンピック選手のケイトリン・ジェンナー、自身がトランスジェンダーであることを告白

1976年モントリオールオリンピックの金メダリストで、元陸上選手のケイトリン・ジェンナー(旧名ブルース・ジェンナー)がトランスジェンダーであることを告白しました。ジェンナーはABCの番組で告白をした2015年4月当時、65歳でした。その後名前をケイトリンに改め、6月には雑誌ヴァニティ・フェアの表紙を飾りました。

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連邦最高裁が同性婚に合憲判決

6月26日、連邦最高裁判所が歴史的な判決を下しました。最高裁はオバーガフェル対ホッジス裁判への判決で、同性婚を合憲であるとしました。この判決によって、アメリカ合衆国内の全ての州で同性のカップルに婚姻の権利が認められることとなり、全米の当事者たちや同性婚の権利を支持する人々はこの判決を祝福しました。

政府も合憲化に祝意を示し、ホワイトハウスが虹色にライトアップされました。

 

2016年

LGBTQ+ナイトクラブで史上最悪の大量殺人が発生

2016年6月12日、カリフォルニア州オーランドのLGBTQナイトクラブが銃撃され、49人もの人々が殺害されました。この事件は当時ではアメリカ史上最大の死亡者を出した銃乱射事件でした。(悲しいことに、翌年のラスベガス乱射事件によって記録は塗り替えられることとなりました。)

 

軍がトランスジェンダーの入隊を解禁

6月30日、カーター国防長官がトランスジェンダーの軍への入隊解禁を宣言しました。この解禁と2010年DADT撤廃により軍内での制度的な性差別は解消され、平等が実現されることとなりました。

 

オレゴン州でアメリカ史上初、LGBTQ+を公表した知事が誕生

2016年11月の選挙でオレゴン州のケイト・ブラウンが、LGBTQ+を公表した人物としては初めて知事に当選しました。

 

2017年

映画「ムーンライト」がアカデミー作品賞を受賞

若い黒人の同性愛者の人生が描かれた映画「ムーンライト」が、同年では有力候補と見られていた「ラ・ラ・ランド」などを押しのけて、作品賞を受賞しました。「ムーンライト」はLGBTQ+を主題材として扱った作品としては、初のオスカー作品賞の受賞作となりました。

 

ヴァージニア州で初のトランスジェンダー議員が当選

11月8日、ジャーナリストのダニカ・ロームはヴァージニア州下院選挙で当選しました。この勝利により、彼女は同州及び全米で初めてのトランスジェンダーの州議会議員となりました。

 

2018年

「虹色の波」〜中間選挙でLGBTQ+の候補者が大量当選〜

2018年11月中間選挙の下院選挙では民主党が大勝を納めました。その中の一人、カンザス州出身のシャリス・デイビッズ議員はネイティブ・アメリカンとして、カンザス選出として初のLGBTQ+を公言した当選者となりました。(また、ネイティブ・アメリカンの女性としても初めての国政選挙当選者の一人ともなりました。もう一人はニューメキシコ州で同下院選挙で勝利したデブ・ハーランドです。)

また、同中間選挙での地方選を合わせると150人を超えるLGBTQ+の候補者が勝利し、「虹色の波」とも呼ばれる選挙となりました。

 

2019年

ピート・ブーティジェッジが大統領選挙に参戦

2019年1月、インディアナ州サウスペンド市の市長を務める37歳のピート・ブーティジェッジが民主党からの大統領選への出馬を宣言しました。これにより、彼は米国史上初のゲイを公言している大統領候補者となりました。

現在民主党予備選挙を戦う彼は、世論調査での支持率でバイデン、サンダース、ウォーレンに次ぐ四番手として選挙戦を戦っており、老いたベテラン政治家ばかりのトップ集団で若手のフレッシュな存在感を示しています。

 

以上、2010年代アメリカで起こったLGBTQ+にまつわる代表的な出来事を紹介しました。

やはり最大の出来事といえば2015年の同性婚に対する合憲の判決ではないでしょうか。日本の司法はアメリカに比べると違憲審査に信じられないほどに消極的ですが、アメリカでは最高裁が歴史的な判決を下して社会の進歩を後押ししてきたことが何度もあります。

このオーバーガフェル対ホッジス判決でのアンソニー・ケネディ判事が届けた法廷意見は歴史に残る名文ともされていますので以下に紹介します。

No union is more profound than marriage, for it embodies the highest ideals of love, fidelity, devotion, sacrifice, and family. In forming a marital union, two people become something greater than once they were. As some of the petitioners in these cases demonstrate, marriage embodies a love that may endure even past death. It would misunderstand these men and women to say they disrespect the idea of marriage. Their plea is that they do respect it, respect it so deeply that they seek to find tis fulfillment for themselves. Their hope is not to be condemned to live in loneliness, excluded from one of civilization’s oldest institutions. They ask for equal dignity in the eyes of the law. The constitution grants them that right.

The judgment of the Court of Appeals for the Sixth Circuit is reversed.

It is so ordered.

 

結婚以上に大切な人々の結びつきは存在しない。それは至高の愛と貞操、献身、自己犠牲、そして家族という在り方を結婚というものが具現化しているからだ。

そして二人の個人は、結婚を経る事でその日までの彼ら自身を超えた何者かへと成る事ができる。

本訴訟の申立人たちが示したことだが、結婚とは死が訪れる日まで続く二人の愛の証明である。だから彼らが結婚制度の在り方を軽視しているというのは大きな誤解である。

彼らは結婚という結びつきの在り方を尊重している。深く尊重している。そしてそれによって自分たち自身も満たされたいという思いを追求しているのだ。

彼らの願いとは非難されず、孤独のうちに生きることなく、社会の古い諸制度から排斥をされないことだ。

彼らは法の下の平等な尊厳を求めている。そして、合衆国の憲法は彼らのそのような権利を保障している。

よって合衆国最高裁判所は、第六巡回区控訴裁判所の判決を破棄することを命じる。

オーバーガフェル対ホッジスより引用

 

虹色の波が訪れた2010年代のアメリカにふさわしい美しい判決文です。そしてこのような世界観は若者世代ではいまや当たり前のように共有されています。これからの時代には更なる歩みを進めることとなるかも知れません。

そして残念ながら、日本では未だに同性婚が認められていません。2020年代に私たちは私たちの社会をどこまで前進させることが出来るのでしょうか。

 

記事引用元

A very LGBTQ decade: Gay marriage, trans rights and a ‘rainbow wave’ / NBC News

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