今年、アメリカで注目すべき8つの建設プロジェクト

以前、当ブログではバイデン政権によるインフラ法案可決に関する話題を扱いましたが、それと関連して建設・土木に関するニュースを専門で扱うサイトConstruction Diveで今年注目すべき8つのプロジェクトの記事がありましたので紹介したいと思います。

注目されている建設プロジェクトから、今のアメリカの世相が見えて来るかも知れません。

1. サムスン半導体工場

テキサス州オースティン

2021年の11月末、韓国のサムスン電子は170億ドル(約2兆円)規模の巨大な半導体工場をテキサス州オースティンの北西に位置するテイラーに新設する事を発表しました。工場の建設は2022年中は開始され、サムスンは2024年の操業開始を目指しています。

サムスンは90年台後半にオースティンに製造拠点を設けていますが、今回のテイラー工場の新設は米国における韓国企業による建設投資としてはそれ以降で最大の物となります。

コロナウィルスの感染拡大により全世界で半導体の供給不足が深刻化していますが、その中でバイデン政権は米国内の半導体研究及び製造に対する6兆円規模の支援を推し進めています。

サムスンによる新たな半導体工場の建設は、こういった新たな支援法案から投資や減税措置などのインセンティブを受ける見込みとなっています。

2. カリフォルニア州高速鉄道

セントラル・バレー

カリフォルニア州の大都市圏同士を接続する高速鉄道の建設は世界的にも有名な建設プロジェクトですが、現在その核をなすセントラル・バレーでの路線建設が進行しています。

セントラル・バレーはカルフォルニア州の内陸部であり、構想ではサンフランシスコやロサンゼルスのような沿岸の大都市圏を出た列車はこのセントラル・バレーを通って南北に行き交う事になっています。

現在建設中なのは119マイル(約190km)分で、35の建設サイトが稼働しているとのことです。セントラル・バレーセクションの総工費は130億ドル(約1.5兆円)です。

カリフォルニア州高速鉄道はサンフランシスコ、サクラメント、ロサンゼルス、サンディエゴなどの大都市圏同士を結ぶ構想であり、総延長は800マイル(約1290km)以上となります。2028年の部分開業を目指しており、サンフランシスコ ー ロサンゼルス間の開業は2033年12月と予想されています。

3. アマゾン第2本社

バージニア州クリスタルシティ

2019年にバージニアに誘致されたアマゾン第2本社ビルの建設が2022年に佳境を迎え、2023年には完成の予定となっています。

バージニアへのアマゾンの第2本社設置は、バージニア州のみならずワシントンDCを巻き込んだ周辺地域に大きな経済効果を与えるとされています。

またクリスタルシティはかつて軍事基地によって栄えた地域でしたが、基地閉鎖以降の地域経済は下り坂となっていました。そのような状況ですので、アマゾンの進出による地域住民との摩擦は比較的小さなもので済むと考えられているようです。

第2本社はオフィス総床面積が約19万5000平方メートルとなり、そのうちの4640平方メートルは地域のスモールビジネスに対して貸し出される予定となっています。総工費は25億ドル(約2900億円)です。

4. バッファロー・ビルズの新スタジアム

ニューヨーク州バッファロー

NFLチームのバッファロー・ビルズが新スタジアムの建設を模索しています。

現在のスタジアムは1970年に建設されたために老朽化が進んでおり、ビルズのオーナーであるペグラ夫妻はバッファロー郊外に新スタジアムを建設することを主張しています。

一方で彼らは公的資金の投入を求めており、それが叶わなければチーム移転を行う事を示唆しています。

現在のスタジアムとビルズの間には移転禁止条項があるために、すぐに行動に出る事はありませんが、条項の期限は2023年であるため、今年中にビルズとバッファロー市、そしてニューヨーク州の間で新スタジアムについての合意が形成されるか否かが注目されています。

仮にダウンタウンにある現在のスタジアムを建て替える場合のコストは21億ドル(約2400億円)で、郊外の場合は14億ドル(1600億円)となる見込みです。

5. エドワーズ&サンボーン・ソーラーエネルギーストレージ

カリフォルニア州モハベ砂漠

米国の再生エネルギーデベロッパーであるテラジェン(Terra-Gen)は昨年よりカリフォルニア州モハベに巨大なギガソーラーと蓄電池による複合施設の建設を開始しました。

エドワーズ&サンボーン・ソーラーエネルギーストレージと呼ばれるこのプロジェクトは2022年の第4四半期までに完成する予定となっています。投じられたコストは11億5000万ドルです。

エドワーズ空軍基地の敷地の一部と私有地を跨ぐ形で建設されているこの施設の出力は1118MWで、ストレージ容量は2165MWhであり、これは単一の発電施設及びストレージとしては世界最大規模のものです。

こういったプロジェクトの背景には州の気候変動対応があり、カリフォルニア州は2030年までに60%、2045年までに州内全ての発電のゼロ・カーボン化を目指しています。

6. メキシコ国境の壁

テキサス州

トランプ時代の公約に掲げられていた連邦政府によるメキシコ国境との壁建設は、バイデン政権の発足により破棄されました。

しかし、テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は州独自にこの壁を建設するプロジェクトを2021年6月頃より推進してきました。そして12月、その一部である全長880フィート(約270メートル)の壁がスター郡に建設されました。この時アボット知事は式典を開いた事で話題となりました。なお、テキサス州・メキシコ間の国境の長さは約1240マイル(約2000キロメートル)です。

総工費は不明で、州は国境警備予算から11億ドルを支出しているとしています。また一部の費用をクラウドファンディングによって募っており、現時点では5400万ドルの寄付が集まっているとされています。そのうちの97%はパンナム・システムズ会長であるティモシー・メロン氏によるものです。

7. エンブリッジ社のLine 5トンネル

ミシガン州マキナック海峡

カナダの燃料サプライヤーであるエンブリッジ社はカナダのオンタリオ州から米国のミシガン州、ウィスコンシン州を通過してミネソタ州ダルースに至るパイプライン「Line 5」を所有・管理しており、そのうちのヒューロン湖とミシガン湖を結ぶマキナック海峡でトンネルの建設プロジェクトを進めています。

現時点ではパイプラインは湖底に設置されていますが、海峡部の地下100フィート部分にトンネルを掘り、ここに新たなパイプラインを置き換えようという試みです。建設費用は5億ドルとなる見込みです。

この計画は2018年に前ミシガン州知事であるリック・ペリーによって承認されましたが、環境団体や先住民団体は環境への悪影響を理由にこの新プロジェクトには反対しており、現在の知事であるグレッチェン・ウィットマーは湖底部のパイプラインをシャットダウンすることを公約に知事に当選したことから、エンブリッジ社とミシガン州との関係は悪化しており、トンネル化プロジェクトの今後も不明となっています。

8. ハイパーループ

アメリカ全土

11月にバイデン大統領が署名したインフラ投資及び雇用法案によって、米国内でのハイパーループ建設に対する公的投資の枠組みなどの方針が示されました。

ハイパーループとはテスラCEOのイーロン・マスクが構想を提案したことで広く知られることとなった、新たな交通システムの一種です。地下に掘られた真空チューブの中をポッドが超高速で移動するという未来の超高速鉄道であり、時速1000キロメートル以上の速さで走行することができると言います。

このハイパーループは米国内の様々な企業や研究機関において研究・開発が進められています。代表格でもあるカリフォルニア州のヴァージン・ハイパーループ社は2020年にバージニア州において800エーカー規模の実験用サイトを建設しています。同社は2025年の安全性証明の獲得と、2030年までの商用オペレーションの開始を目指しているとのことです。

引用・参考元

Construction Dive – https://www.constructiondive.com/news/8-construction-projects-to-watch-in-2022/616692/

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